2010年6月2日水曜日

池の老賢人

うちの事務所は、不忍池に面したマンションの中。

事務所の真下の住人、Dさん。もう80代後半の男性。いつもエレベータで挨 拶をするだけなのだが、私は彼の事が大好きです。

アメリカから日本に永住して、一人暮らしをしている Dさん。彼をみていると、いつも最晩年のユングを思いだす。
最晩年のユングの写真なんてみたことないけど、あの「賢人」というイメージが、Dさん と重なってしまう。
Dさんは、文章を書いていて、それを読むと、この池が大好きなのがすごく伝わってくる。
いつも夕方に池の畔をあるいている。
まるで不忍池の番人のような人。この国の人より、もっとこの池が似合う人。


実はここ半年、Dさんをみかけなくなった。高齢だけど、ものすごく明晰で頑強なDさんだから、ちょっと意外だった。だけど、入院してもうこれきり会えないのかと、ずっと心配して いた。

最近なんとなく、このマンションにいる気配。管理人さんに訊くと、
「退院して、付き添いさん付で自宅にいるよ。時々、 車椅子で散歩に行っているから」
と嬉しいことがきけた。


Dさんが池の側にいないと、私はなんだか落ち着かなくて。
お帰りなさい。

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